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健康コラム

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子どもの頃の水ぼうそうが原因?中高年は帯状疱疹に要注意!

医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ

医師 小田原 隆 監修

(元氣プラザだより:2025年7月号)


体がチクチク(ピリピリ)と痛くなり、数日後に赤みが出てきて水ぶくれになった。周囲でこんな経験談を聞いたことはありませんか?その症状、もしかすると「帯状疱疹」かもしれません。多くは自然治癒しますが、つらい合併症(後遺症)が起こる場合もあるため、予防の重要性が叫ばれる病気のひとつです。

帯状疱疹とは

帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じウイルス(VZV:varicella zoster virus(水痘・帯状疱疹ウイルス))による感染症です。
VZVに初めて感染すると水ぼうそうとして発症し、治癒後もほとんどの人で、ウイルスは背骨近くにある知覚神経節に潜伏して生き続けます。免疫力が低下することで潜んでいたウイルスが再活性化し、神経に沿って移動することで皮膚の細胞に感染・増殖し、赤みや発疹を伴う帯状疱疹を発症します。

子どもの頃に水ぼうそうになり抗体を持っていても、体の中でVZVに対する特異的な細胞免疫効果は加齢とともに弱くなり、帯状疱疹を発症しやすくなります。50歳以上での発症率は増加し、80歳までに3人に1人が発症するといわれています。

症状

数日~1週間程度、神経痛のような痛み、ピリピリ、チクチクなどの不快な感覚が、体の左右どちらかに現れます(神経は体の中央から左右に分かれているため)。その後、同部に赤みをもった発疹(浮腫性の紅斑)が帯状に現れ、ほどなく赤みの上に複数の小水疱(水ぶくれ)を生じてきます。

合併症

帯状疱疹の症状は体幹(胸や腹)の片側に現れるのが一般的ですが、腕や足、顔面などにも現れることがあり、次に挙げるような合併症の原因にもなります。
 
▶帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)
帯状疱疹の発疹は3週間ほどで消えることが多いのですが、その後にも痛みだけが長く続くことがあります。痛み方は、焼けるような痛み、突き刺すような痛み、締め付けるような痛みなどさまざまです。中には痛みを感じないであろう軽い刺激(軽く触れただけ)にも強い痛みを感じる方もいます。
特に、痛みが3か月以上続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼び、長い場合は1年以上続くこともあります。PHNは50歳以上の約2割にみられるといわれており、加齢とともに増えていく合併症です。

▶顔面神経麻痺(ラムゼイ-ハント症候群)
顔面神経の神経節から生じる帯状疱疹では、耳介周辺の痛み、顔を動かす筋(眼周囲~口周囲)の麻痺、味覚障害などに加え、聴神経症状(難聴、めまいなど)も起こし、神経の炎症が強いと障害が残ることもあります。
 
▶角膜炎、結膜炎、虹彩炎
眼神経に沿った帯状疱疹の場合は、おでこから眼球まで拡がることがあり、視力の低下や失明につながることもあります。
 
▶生じる部位によっては、上肢麻痺、排尿障害(尿閉)、排便障害などを起こすこともあります。

治療法

帯状疱疹が疑われる症状が出たら、すぐに皮膚科などを受診してください。治療は皮疹の出現後72時間(3日)以内の有効性が高いとされていますので、早めの受診が重症化のリスクを抑えるカギです。
 
帯状疱疹は放置しても1か月ほどで治るケースがほとんどですが、発症初期の段階で早めに抗ウイルス薬によってウイルスの増殖を抑えることで、症状を抑える、痛みを緩和する、合併症や後遺症を軽くするなどの効果が期待できます。特に帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防には、初期の抗ウイルス薬の投与が重要です。

帯状疱疹になってしまったら

・安静・休養をしっかりとる
免疫力の低下でウイルスが活性化するため、栄養と休養をしっかりとって体力の回復に努めましょう。
(初期に軽症であっても無理をすると重症化し、入院治療が必要になることもあります)。
・水ぶくれは破らず清潔に
水疱(水ぶくれ)の中の液体にはウイルスがいます。感染の恐れがあるため、破らないよう保護をするなどのケアをしてください。水ぼうそうにかかったことがなくワクチン接種もしていない人(免疫のない人)にはうつる可能性があります。また、破れた部位に別の菌が感染して化膿するリスクともなります。
・人にうつさないよう配慮を
出社の制限等はありませんが、水ぼうそうに免疫のない人との接触を極力避ける配慮は必要です。特に、赤ちゃんや水痘ワクチンの接種完了していない子供などには水ぼうそうを起こす可能性がありますので、皮疹に接触させないようにし、タオルやコップの共有も避けましょう。(洗濯はいつも通りで構いません)

帯状疱疹にならないために〜中高年はワクチンで予防を

帯状疱疹は、連休明けやお盆明けなどの疲れが溜まりやすい時期に発症することが多いとされていますので、健康的な生活習慣を意識し、しっかり休養を取ることが大切です。
また、帯状疱疹は、ワクチン接種で予防できることが分かっています。ワクチンには従来からある生ワクチン(水痘ワクチン)と不活化ワクチン(組換えワクチン)の2種類があり、いずれかの1種類を接種します。ワクチン接種は帯状疱疹の発症率が急増する50歳以上の方が推奨されており、当法人でも帯状疱疹ワクチン接種を行っています。

なお2025年度からは、65歳になる方を対象に帯状疱疹ワクチン接種が定期接種となり、費用の一部は自治体からの補助で受けることができます。2029年度までの5年間は経過措置(65歳以外でも公費補助の対象となる年齢がある)も実施されますので、自治体からのお知らせなどをご覧になりご検討ください。



こころとからだの元氣プラザ 予防接種の受付はお電話にて承っています

参考
厚生労働省:帯状疱疹ワクチン

ご精読ありがとうございました!

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