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健康コラム

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生理がつらい理由、もしかして子宮筋腫かも?

医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ

副所長、婦人科医 大村 峯夫 監修

(元氣プラザだより:2025年4月号)


月経(生理)の痛みが強い、出血量が多く、それに伴う貧血がある、不正出血が続く——それは、「子宮筋腫」のサインかもしれません。成人女性の4人に1人にみられる子宮筋腫ですが、すべてが治療を必要とするわけではありません。どんな症状?放置しても大丈夫?治療法にはどんな選択肢があるの?——子宮筋腫について、詳しくみていきましょう。

子宮筋腫とは

子宮は平滑筋という伸縮性のある筋肉組織でできており、鶏卵ほどの大きさです。その筋肉組織に異常発生するこぶ状のできもの(良性腫瘍)を子宮筋腫といいます。
子宮筋腫の成長には卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響しています。分泌量の多くなる性成熟期(20歳前後)から更年期(40、50代)に筋腫は大きくなり、逆に閉経により卵胞ホルモンの分泌がなくなってくると筋腫は小さくなっていきます。
 
女性ホルモンが関わる病気なので、月経が始まる前の年齢層の方にはほとんど問題になりません。その一方で、30歳を超えると女性の3割前後には大小を関わらず子宮筋腫があると言われていますから、かなりの発生頻度であるといえる病気です。

子宮筋腫は発生する場所によって大きく3つのタイプがあります。

【 漿膜下(しょうまくか)筋腫
子宮の外側にできる筋腫。外側に向かって大きくなるため、大きくなっても子宮への症状が現れにくい。このうち茎を持っているタイプ(有茎筋腫)はねじれると激痛が起こることがある。
筋層内筋腫
筋層の中にできる筋腫で、子宮筋腫の中でもっとも多いタイプ。月経痛が強くなることが多い。
粘膜下筋腫
子宮内膜の内側にできる筋腫。子宮の中に向かって大きくなるため、小さくても月経量の増加などの症状が強く出る。筋腫にできた茎が細長くなると、筋腫が子宮から膣へ飛び出すことがある(筋腫分娩)。

子宮筋腫の症状

主な症状は、月経の出血量が異常に多くなる(月経過多)、月経が8日以上続く(過長月経)、これらに伴う鉄欠乏性貧血や月経困難症(月経痛)、不正出血などです。症状の強さは筋腫の発生場所や大きさ、個数によって異なり、場合によっては月経時以外でも下腹部や腰に痛みを伴うことがあります。筋腫が大きくなって周りの臓器を圧迫すると、頻尿、排尿困難、腰痛、便秘など排泄に関する症状もみられ、不妊や流産、早産の原因にもなります。

子宮筋腫の検査と診断

内診と超音波検査が一般的です。ただし筋腫の数が多かったり大きすぎたりすると、内診や超音波検査だけでは全体像がはっきり見えないことがあります。このようなケースや手術の可能性があるケースでは、MRI検査を行います。

治療が必要となるケース

子宮筋腫は基本的に良性の腫瘍ですので筋腫があるというだけなら治療の対象にはならず、がんのような命の危険はありません。サイズが小さく症状がない場合、その多くは経過観察となります。
 
しかし、次のような場合は治療が必要となります。
 ・サイズが大きい(握りこぶし大以上)、または短期間で大きくなる
 ・大きくなることで周囲の臓器を圧迫する可能性がある
 ・まれに子宮肉腫(悪性腫瘍)である可能性がある
 ・症状により日常生活や仕事に支障がある
 ・耐え難い痛み、大量出血やそれに伴う貧血など

子宮筋腫の治療

子宮筋腫の治療には薬物療法と手術の2つの選択肢があります。
【 薬物療法 】
*偽閉経療法:ホルモン剤により閉経した状態にして月経を止める治療法
 ・閉経が近い方(閉経を早める)、手術療法直前の方、重い合併症で手術ができない方などに行われることが多い
 ・エストロゲン量を減らし子宮筋腫を小さくする
 ・ホルモン剤を止めると筋腫のサイズは元に戻り症状も再発する
 ・更年期障害の症状や骨密度減少などが現れることがある
 ・治療期間は6か月以内に限られているものもある
 *対症療法
 ・今現れている症状を和らげるための治療法
 ・造血剤(鉄剤)(過多月経、過長月経による貧血など)
 ・抗炎症剤(鎮痛剤)(月経痛など痛みをコントロールする)
 ・低用量ピル(過多月経、月経困難など)

このほか、過多月経、月経困難などに対する治療として「子宮内黄体ホルモン放出システム」があります。ホルモン剤を出す器具を子宮内に挿入し、子宮内膜の発育を抑える方法です。
 
【 手術療法 】
*子宮筋腫核出術 筋腫部分だけを取り除く手術
 ・今後の妊娠、出産を望まれる方や、子宮を残す気持ちの強い方が対象
*子宮全摘術 子宮全体を摘出する手術
 ・妊娠希望や予定がない方が対象

手術には開腹術、子宮鏡、腹腔鏡、手術支援ロボットなどがあり、筋腫の大きさや場所などにより術式が決まります。

子宮筋腫と上手に付き合っていくために

決して珍しい病気ではない子宮筋腫。症状のあらわれ方には個人差があり、強い月経痛や不正出血が続くと日常生活に支障をきたします。痛みの原因を特定し治療を受けることで健やかな生活を送れるよう、できるだけ早めに婦人科を受診することが大切です。
 
こころとからだの元氣プラザの婦人科では、女性医師も在籍し、受診者様の病状を把握したうえでそれに合わせた治療をお勧めしており、手術療法が必要な場合は適切な高次の医療機関をご紹介しています。つらい症状がある方は毎月のことと諦めずに、当法人の専門医にご相談ください。
 
また、当法人の健康診断や人間ドックの検診で子宮筋腫を指摘される方も少なくありません。定期的に検診を受けて、自身の子宮の状態を知っておくことも重要な予防策と言えます。

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