サイト内キーワード検索

健康コラム

キービジュアル画像

脂肪肝はお酒好きだけの病気ではない!?食事と運動で肝臓を守ろう

医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ

統括所長 中村 哲也  監修

(元氣プラザだより:2024年7月号)


健康診断で「脂肪肝」の疑いがあると言われても、今のところ痛みや自覚症状がないため「たいしたことないのではないか」と思う方が多いのではないでしょうか。しかし、脂肪肝は放置すれば肝硬変や肝がんにつながるおそれのある病気なのです。お酒を飲まない方でも、生活習慣の乱れから非アルコール性の脂肪肝になるリスクがあります。脂肪肝に関する知識を身につけ、肝臓を守る一歩を踏み出しましょう。

脂肪肝とは

脂肪肝とは肝臓に脂肪が多くたまった状態をいいます。脂肪肝には、お酒を原因とするアルコール性と、お酒以外の原因による非アルコール性があります。非アルコール性の、脂肪肝から脂肪肝炎や肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病を『非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)』と呼びます。一滴もお酒を飲まない方だけでなく、少量のお酒を摂取している方に見られる脂肪肝も含まれます。男性で1日30g未満(ビール500ml缶 1.5本分)、女性で20g未満(ビール中びん1本、清酒1合、焼酎25度100ml、ウイスキー60ml、チューハイ 7%350ml缶 1本分)の飲酒量であれば非アルコール性とみなされます。

非アルコール性脂肪性肝疾患のうち8割強は長期にわたり脂肪肝のままで経過して進行しません。しかし、2割弱は徐々に悪化し、肝炎や肝硬変に進行します。肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴っていると進行しやすくなると考えられています。
非アルコール性脂肪性肝疾患の患者数は全国で1,000万人以上と推定されています。男性の中年層、女性の高齢層に多い傾向があります。近年、非アルコール性脂肪性肝疾患の予防と治療が重要視されており、生活習慣の改善が推奨されています。

脂肪肝の症状・病態

食事から摂取したものは腸で消化・吸収され栄養素として肝臓に取り込まれ、さらに分解や合成を経て全身に送られます。それらのなかで過剰摂取した脂肪分はもちろん、糖分も中性脂肪に変換され、肝臓に貯められます。つまり、運動不足や過食などで、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると肝臓で脂肪が多く作られるようになり、それが脂肪肝になります。また、血糖値を下げる働きがあるインスリンの効きが悪い状態にあると、肝臓で中性脂肪がたくさん作られます。
脂肪肝のなりやすさ(肝臓への脂肪のたまりやすさ)はその人の体質によって異なりますが、最近の研究では、遺伝的な要素や、代謝異常、サルコペニア、腸内細菌などとの関わりも報告されています。

脂肪肝や肝炎はかなり進行しない限り明確な症状が出ることはないため、自覚症状だけでは進行程度を把握するのは困難です。
病気がかなり進行し、たとえば肝硬変に進むと、腹水による腹部膨満感(お腹が張る)、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、足のむくみなどの症状がみられることがあります。

脂肪肝の検査、診断

定期健康診断、生活習慣病健康診断、特定健康診査において、血液検査の肝機能・血中脂質項目や腹部超音波検査などの結果で肝障害や脂肪肝がある、または疑いがあることがわかります。

受診後の結果報告書の見方
血液検査 - 肝機能・脂質代謝
消化器系 - 腹部超音波検査 ※元氣プラザでは主に人間ドックで実施

このような指摘を受けたら、進行度の把握のため肝臓の硬さを調べてもらうようにしましょう。
診断するためには、次のようなことについて問診や検査を行います。
問診・・・飲酒状況、体重変化、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧など)の有無、サプリメントを含む服薬歴
血液検査・・・肝機能検査、生活習慣病に関わる検査、ウイルス性肝炎や自己免疫席肝炎など他の肝臓病に関わる検査、甲状腺ホルモンなどホルモン検査
画像検査・・・超音波、CT、MRIなど
 

脂肪肝の治療

非アルコール性脂肪性肝疾患は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、メタボリック症候群と密接に関連しています。進行防止のためには、メタボリック症候群の改善が重要となります。治療の原則は、食事療法や運動療法などで生活習慣を改善し、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を改善することです。肥満があれば体重の7%減量を目標に、標準体重に近づける必要があります。減量のみで効果が不十分な場合には、抗酸化作用のあるビタミンE、糖尿病、脂質異常症、高血圧の薬物治療を医師と相談してください。

脂肪肝の改善と進行防止のために日常生活でできること

・食事
脂肪肝の改善には体重の7~10%の減量が望ましいとされています。日頃から3食きちんと取り、バランスの良い食事を心がけましょう。
 

避けるもの

・糖質や脂肪

・ラードや牛脂、バターなど、動物性の油

・加工食品に含まれる油脂

・ショートニングを使ったお菓子や揚げ物、マーガリンなど、トランス脂肪酸を多く含む食品


オリーブオイルやごま油など、飽和脂肪酸の少ない植物性の油に

洋菓子よりも和菓子に


積極的に摂るもの

・多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸の仲間)を多く含むサバ・サンマ・ブリ・イワシなどの青魚

・ビタミン、食物繊維を多く含む緑黄色野菜


夜遅くや就寝前の食事は控えめにしましょう。果糖を多く含む清涼飲料水などの摂り過ぎにも注意が必要です。

・運動
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を30分以上、週3~4回以上行うことが推奨されています。関節への負担が少ない筋力トレーニングやヨガなども効果的です。運動により筋肉量が増えると基礎代謝(人が生きていくために最低限必要なエネルギー)が高まるため、糖質の消費が促進され非アルコール性脂肪性肝疾患の改善につながります。まずは1日5分や10分からでも構いません。できる範囲から体を動かす習慣をつけることが大切です。

 サイクリング      

・その他の生活習慣
過剰な飲酒は肝疾患が進行するリスクを高めるため、飲酒は控えめにしましょう。健康食品やサプリメント、漢方薬の長期使用は医師と相談の上で判断しましょう。体重やウエスト周囲径から肥満状態を確認し、血液検査や画像検査で肝臓の状態を定期的に把握することをおすすめします。 

元氣プラザの受診後のサポート 特定保健指導

ご精読ありがとうございました!

施設のご案内
住所
〒101-0051
東京都千代田区神田神保町1丁目105番地
神保町三井ビルディング1階・2階
最寄駅
都営三田線・新宿線・東京メトロ半蔵門線
神保町駅A9出口 徒歩1分
東京メトロ東西線
竹橋駅3b出口 徒歩5分
Pマーク