冬季うつ病(季節型うつ病)
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
精神科医 吉澤 徹
(元氣プラザだより:2022年12月号)
季節は秋から冬へと移り変わり鍋物が恋しい季節になりました。この時期、何となく億劫で家事をやる気になれず、仕事に行っても業務に集中できないといった経験がある人もいると思います。冬の季節に多いうつ病として「冬季うつ病」があります。いわゆる一般的な「うつ病」はきっかけや季節性もなくいつでも発症する可能性がありますが、冬季うつ病は10月~12月頃に始まり春の訪れとともに軽快する事が多く、反復性うつ病、季節型うつ病とも呼ばれています。
一般的なうつ病との症状の違い
一般的なうつ病の症状で有名なのは不眠と食欲不振です。疲れているのに夜は眠れず、食欲もなく美味しいと感じないというのがうつ病の典型的な症状です。しかし、冬季うつ病では逆に寝すぎてしまう「過眠」や食べ過ぎてしまう「過食」が症状として出る人もいます。
特に甘いもの(炭水化物)を多く欲するようになり体重が増えてしまう例もみられます。
冬季うつ病の原因
日照時間や気温、天候との関連が指摘されています。脳内の神経伝達物質のバランスが崩れるとうつ病などのこころの不調をきたすと言われています。日照時間や寒さなどが原因でセロトニン等の神経伝達物質の分泌低下が関わっているという説もありますが未解明の部分も多い分野です。
また、季節性のうつ病には「そう」と「うつ」を繰り返す躁うつ病(双極性障害)が隠れている事もあります。
冬季うつ病の予防と治療
冬季うつ病になる人は、毎年冬になると気分がすぐれないという傾向を自分でつかんでいる人もいます。季節性のうつ病は毎年同じ時期に起きることが多いためまずは自分の傾向を知りましょう。そして、不調が出やすい時期には家事や仕事等のストレス負荷を減らし無理をしない事が大切です。
また、積極的に日の光を浴びる事が推奨されており、その他は規則正しい生活をし十分に休息をとる等も大切と考えられています。
生活に支障が出ている場合は専門科に受診を
人は感情を持つ生き物ですので嬉しいことがあれば喜び、悲しいことがあれば落ち込み涙を流すこともあります。気分がすぐれない日は誰でも起こることがあるため、普段よりは少し元気はないけど普段通りの生活は出来ていて1日~数日で回復出来る様であれば様子をみてもよいかもしれません。しかし、不調が長引いたり、仕事や生活に支障をきたす場合は治療が必要な場合もございます。また、今回は冬季うつ病を取り上げましたが、体の病気でうつ病に似た症状をきたすものもあります。
体の病気と同様、こころの病気も早期発見、早期治療が大切ですので、気になる症状があれば早めに専門科への受診をお勧めいたします。
ご精読ありがとうございました!